ビジネス奮闘記

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2010年10月1日金曜日

大学の卒業論文 ~:近年のオーストラリア難民政策における国家安全保障と人間安全保障問題

慶応義塾大学にオーストラリア研究で著名な関根政美教授がいらしたこともあり、政府在勤時代に移民政策を勉強する上で、法学部に在籍していました。日々の実務から最も関心の高いエリアであった難民政策についてのテーマを卒業論文にしまして、今となっては、ある意味在勤時代に形にできてよかったかと感じます。 参考までに要約を記述させていただきたいと思います。(2005年執筆)


論文題目:
『近年のオーストラリア難民政策における国家安全保障と人間安全保障問題』

<本文要約>

 オーストラリアはイギリスの入植時代を経て第二次大戦後、アジア系を大量に含む移民を導入したことにより経済的国家形成を果たした移民国家としてその存在意義は大きい。東南アジア諸国を隣国としている地理的条件からも「白豪主義」から「多文化主義」へ移行し、多くのアジア系を含んだ世界各国からの移民を受入れる国へと変容したその政策転換は象徴的であり、特に難民を多く受入れてきたオーストラリアは他諸国に比較して難民支援と人道援助の歴史は斬新であったといえる。

 現ハワード首相が1996年就任以来、時代の変遷に応じて移民政策を指揮してきたが、多文化主義政策によるアジア系移民が増大する状況の中で、近年の移民政策においてとくに不法入国者への対応・難民受入れ規制について問題視されるようになった。なかでも2001年8月に発生したいわゆる「タンパ事件」はオーストラリア移民政策を大きく方向転換させた。オーストラリア領域外にて難民認定手続きを実施する措置、いわゆるPacific Solutionという解決策を政府として見出した。さらに翌月にはアメリカ同時多発テロが勃発し、以降、各先進国は安全保障対策としてテロ撲滅にむけて特に出入国管理規制を加速させることとなる。

 このような状況から先進国として発展途上国への難民支援は期待されるものの、国際社会も競争が激化する中、積極的な難民受入れは国家のために得策といえるのだろうか、先進国の多くが窮地に追い込まれているのが現状である。オーストラリアにとって2001年は国際情勢もふまえて移民政策を中心に大きく国家政策を転換させることになる象徴的な年となった。
 
 
本論文ではオーストラリア政府の近年における不法入国者や難民に対する政策について、テロ対策含む安全保障を前提とした移民政策という枠組みで認識してよいものか、また、相対して不法入国者や難民たちの人道的措置は果たして国際的立場から人権援護という観点から受入れられるものなのか、激動の2001年を振り返りながら検討したものである。