行政書士の皆さまと実施している「イミグレーションロー実務研究会」において、今回初めて、日本の在留資格に関するセミナーを実施いたしました。 はじまって2年近くたちますが、日本をトピックスにし、実務に関わる行政書士の方とアカデミックの大学の先生方が一緒に今後の日本の在留資格を検討するとてもよい機会となりました。 大変多くの方がご参加下さり、行政書士からの実務面におけるご意見も非常に興味深いものでした。
「高度人材ポイント制」については施行はじまってまだ時間も経過していないこと、そして実際の予定以上に利用されている頻度があまりに低いところもあり、まだまだチャレンジは相当な期間継続しそうです。これらについて政府の委員会メンバーであった上智大学教授の大石奈々先生より、この資格制度の現状について、また、今後の課題などが発表されました。
大石先生は国連のILOにおいてもキャリアを積んできた国際派であり、あらゆる視点から日本の在留資格制度についての分析、そして統計に基づく検証から、いまある日本の大きな課題は「この在留資格制度のみを改善しても、受け入れる社会のほうのインフラ整備が重要課題」というところが最終的な結論でした。 日本はもともと「移民を受け入れる国」として法整備がされてきていない国であり、外国人=あくまでも一時的な在留、という認識が根強く法律の中には残っているのが現状です。 また、日本特有としては「社会保障制度」が「国民皆保険制度」にみられるように、日本人のみならず、日本に居住している外国人に対してもこれらの恩恵はうけられる制度になっており、それがゆえに、「永住」を取得しなくても、これらのベネフィットがある、という点は永住のメリットがかえってみえない、というところも大きな点です。 いわゆる先進国にみられる移民国家においての「永住」の定義はこれらの社会保障制度にアクセスできるようになったり、教育制度において授業料がその国民と同様に扱われ、安価なサービスがうけられるようになったり、、と税金の面とも大きく関わっています。 根本的な問題は、日本はここの点における政策と在留資格は連動したものではないため、税金の使われ方、、、から変えていくのは非常に長期的なプランとなります。
そして、高度人材においての最大の焦点は「雇用」の点です。これらにおいて、日本社会における「高度人材」の扱い方=非常にドライにいえば、給与面において、諸外国に比較しても劣る点は、まったく魅力あるもの、とはみえないのが現状です。 日本の雇用制度、少しは改善されつつある年功序列、そして、給与昇給制度、 また、企業における外国人の割合、、などなど、メリットを追求すれば、、海外のほうが魅力的に映ってしまうこの現状はいなめません。
これらの法整備を検討する省庁の連携も必須であり、この政策プロセスにおいても横のつながりをもって、何が国家にとって有益となるか、そして、どんな国家にしたいのか、というビジョンをもたなければ、本当に難しい、、というのが総合的な私の感想でした。
高度人材と平行して、日本にはいま「人口減少」に対しての具体的政策がほぼ、ない、、、状況であり、この点も深刻に検討する時期にきています。 日本は日本人だけでつくっていくことはほぼ限界にきているのも現状である、というところを政府が危機感をもたなければ、、この問題はつねに空回りする状況であり、その間にどんどん高度人材は流出する可能性も大きい、ということです。
識者としてのご意見を述べつつ、その難しさも痛感しました。
法務省サイトにこれらの「高度人材ポイント制」に関する見直し案のpdfも拝読し、まだまだチャレンジは長期的となりそうです・・・・
名古屋大学の浅川晃広先生からは、高度人材とは真逆ともいえる「難民政策」について日本xオーストラリアの比較を交えて発表がありました。 日本は先進国の中でも最も難民受け入れに消極的というのは有名な話ですが、それでも、参与員になられた浅川先生のコメントは興味深く、「実際に難民としての痛切な雰囲気を感じない」難民申請者も多い、、という事実もあるようです。
オーストラリアは戦後かつて、人口増大のために大量にインドシナ難民を受入れ、永住者⇒国籍取得のキャンペーンも実施し、オーストラリア人としのアイデンティティを多くの移民たちに浸透させる政策もしてきた国です。 そうはいっても、近年は、ボートピープルがまた増加し、これらの制御に国は難民申請に対する厳格化、傾向にまたなりつつあります。
難民条約に加盟している国家はさまざまなジレンマを感じつつ、これらのプロセスについてはどの国も難題となっているようで、、、今後の在り方については、包括的に検討していかなければならない、、という状況のようです。
大石先生は9月からメルボルン大学へ着任されるということで、個人的にはこのような識者の方がオーストラリア移民法を「体感」することで、日本の在留資格も客観的に検証していくきっかけになれば、、と期待するところです。 あまりにもオーストラリアはシステマティックに確立されているため、これを100%取り入れることはほぼ不可能ですが、少しでも、多くの気づきから将来的に在留資格改正のエッセンスになれば、、と感じます。
おふたりともオーストラリアに関わるアカデミックの方として、今後のご活躍をますます楽しみにしております。
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