ビジネス奮闘記

皆さまにとってAOM Visa Consultingが身近なサービスになるようにこのブログでは少しやわらかめのトピックスもふまえて発信していきたいと思います。 オーストラリアやニュージーランド関連のほか、ふだんの活動や関心ごと含めてレポートします。 ご意見・ご感想などございましたらお気軽にメールにてお送りください。 AOM Visa Consulting Official Web site は こちらへ

2013年7月28日日曜日

イミケンセミナー 「高度人材ポイント制と難民政策について」

行政書士の皆さまと実施している「イミグレーションロー実務研究会」において、今回初めて、日本の在留資格に関するセミナーを実施いたしました はじまって2年近くたちますが、日本をトピックスにし、実務に関わる行政書士の方とアカデミックの大学の先生方が一緒に今後の日本の在留資格を検討するとてもよい機会となりました。 大変多くの方がご参加下さり、行政書士からの実務面におけるご意見も非常に興味深いものでした。

「高度人材ポイント制」については施行はじまってまだ時間も経過していないこと、そして実際の予定以上に利用されている頻度があまりに低いところもあり、まだまだチャレンジは相当な期間継続しそうです。これらについて政府の委員会メンバーであった上智大学教授の大石奈々先生より、この資格制度の現状について、また、今後の課題などが発表されました。

大石先生は国連のILOにおいてもキャリアを積んできた国際派であり、あらゆる視点から日本の在留資格制度についての分析、そして統計に基づく検証から、いまある日本の大きな課題は「この在留資格制度のみを改善しても、受け入れる社会のほうのインフラ整備が重要課題」というところが最終的な結論でした。 日本はもともと「移民を受け入れる国」として法整備がされてきていない国であり、外国人=あくまでも一時的な在留、という認識が根強く法律の中には残っているのが現状です。 また、日本特有としては「社会保障制度」が「国民皆保険制度」にみられるように、日本人のみならず、日本に居住している外国人に対してもこれらの恩恵はうけられる制度になっており、それがゆえに、「永住」を取得しなくても、これらのベネフィットがある、という点は永住のメリットがかえってみえない、というところも大きな点です。 いわゆる先進国にみられる移民国家においての「永住」の定義はこれらの社会保障制度にアクセスできるようになったり、教育制度において授業料がその国民と同様に扱われ、安価なサービスがうけられるようになったり、、と税金の面とも大きく関わっています。 根本的な問題は、日本はここの点における政策と在留資格は連動したものではないため、税金の使われ方、、、から変えていくのは非常に長期的なプランとなります。

そして、高度人材においての最大の焦点は「雇用」の点です。これらにおいて、日本社会における「高度人材」の扱い方=非常にドライにいえば、給与面において、諸外国に比較しても劣る点は、まったく魅力あるもの、とはみえないのが現状です。 日本の雇用制度、少しは改善されつつある年功序列、そして、給与昇給制度、 また、企業における外国人の割合、、などなど、メリットを追求すれば、、海外のほうが魅力的に映ってしまうこの現状はいなめません。

これらの法整備を検討する省庁の連携も必須であり、この政策プロセスにおいても横のつながりをもって、何が国家にとって有益となるか、そして、どんな国家にしたいのか、というビジョンをもたなければ、本当に難しい、、というのが総合的な私の感想でした。

高度人材と平行して、日本にはいま「人口減少」に対しての具体的政策がほぼ、ない、、、状況であり、この点も深刻に検討する時期にきています。 日本は日本人だけでつくっていくことはほぼ限界にきているのも現状である、というところを政府が危機感をもたなければ、、この問題はつねに空回りする状況であり、その間にどんどん高度人材は流出する可能性も大きい、ということです。

識者としてのご意見を述べつつ、その難しさも痛感しました。
法務省サイトにこれらの「高度人材ポイント制」に関する見直し案のpdfも拝読し、まだまだチャレンジは長期的となりそうです・・・・

名古屋大学の浅川晃広先生からは、高度人材とは真逆ともいえる「難民政策」について日本xオーストラリアの比較を交えて発表がありました。 日本は先進国の中でも最も難民受け入れに消極的というのは有名な話ですが、それでも、参与員になられた浅川先生のコメントは興味深く、「実際に難民としての痛切な雰囲気を感じない」難民申請者も多い、、という事実もあるようです。
オーストラリアは戦後かつて、人口増大のために大量にインドシナ難民を受入れ、永住者⇒国籍取得のキャンペーンも実施し、オーストラリア人としのアイデンティティを多くの移民たちに浸透させる政策もしてきた国です。 そうはいっても、近年は、ボートピープルがまた増加し、これらの制御に国は難民申請に対する厳格化、傾向にまたなりつつあります。

難民条約に加盟している国家はさまざまなジレンマを感じつつ、これらのプロセスについてはどの国も難題となっているようで、、、今後の在り方については、包括的に検討していかなければならない、、という状況のようです。 

大石先生は9月からメルボルン大学へ着任されるということで、個人的にはこのような識者の方がオーストラリア移民法を「体感」することで、日本の在留資格も客観的に検証していくきっかけになれば、、と期待するところです。 あまりにもオーストラリアはシステマティックに確立されているため、これを100%取り入れることはほぼ不可能ですが、少しでも、多くの気づきから将来的に在留資格改正のエッセンスになれば、、と感じます。

おふたりともオーストラリアに関わるアカデミックの方として、今後のご活躍をますます楽しみにしております。 

2013年7月6日土曜日

LEAN IN ~サンドバーグ氏の本を読んで

最近発売になった本で、話題になっている「LEAN IN 」をさっそく読みました。 著者である、シェリル・サンドバーグ女史は最近日本にも来日していたようで、日経新聞にも大きく特集されていました。 現在は、フェイスブックのCOOとして活躍しています。 彼女が今まで経てきたキャリアおよび私生活にの中で感じてきたことが実直につづられているような印象でした。

それにしても華やかなキャリアの数々・・誰もがこの方のように進める状況ではないですが、社会の上にいけばいくほど、女性における社会のハンディがとても大きい、、、ということを実体験を通じて感じているようでした。 

学業をハーバードにて、、というところから既に雲の上の状況ですが、、そのあとも、政府系に進み、世界銀行、マッキンゼー、そしてグーグル、フェイスブック・・・・とこの流れだけでも、ため息がでます。 ハーバードは学生時代から既に過酷な競争社会ときいていますが、まさに社会において自分の活躍できる場を求めて、切磋琢磨してきた光景が浮かびます。

しかし彼女が感じた社会の現実は、女性ということにおけるハンディがまだまだ大きい、そしてこれを世の中にしってほしい、、というところから(公的にある)徹底したデータ分析のもとに文章はつづっていました。 アメリカは日本のビジネス社会よりはるかに、オープンかつ、受け入れられる文化がある、という印象がありましたが、本人の体験から意外とアメリカでもなかなか大変なのである、ということを実感しています。 

誰もがサンドバーグ氏のようなキャリアをつづることは困難ですが、伝えたかったのは、社会における女性の評価がどうしても男性とは異なるアングルから発生し、これらを克服するために、「一歩踏み出してみましょう」 という激励だったようです。

少し話はそれますが、きのうテレビで林真理子さんが出演されていて最近執筆した「野心のすすめ」という本とご自身のご経験を語っていました。 やはり自分の夢やもっと上を目指している人は「野心家」でなければできない、、ということで、彼女も一歩一歩ほしいものを得てきた経緯がとても具体的で面白かったです。 常に現状満足ではなく、先をみている、ということでした。

キャリアも家庭も公私ともにバランスよく保ち、そして自分の存在価値を社会においてPRしていくのは簡単なことではありません。 ケースは異なりますが、このお二人ともに、それぞれに努力はまだまだ延々と続くものなのだ。。と思いました

ふと自身の環境をふりかえれば、、いまはかなり自由なワークライフを送っており、自分でプランをたて、時間を作り、そして次のビジネスプランを考える・・・と今はあまり「女性だから」不利になったり、ハンディと感じることはまだあまりありません。 もちろんこれは、企業や政府などに勤務していた時代とは大きく異なる環境です。 「一人で働く」というより今は、その時々に必要となる人たちや仲間と「チーム」を作り、プロジェクトやクライアントをサポートする、という体系に変化しています。

もちろん、ミーティングをしてまわりをみると「100%男性」も多いのが実情ですが、まだまだ、自身の触れる世界もそこまでに到達していないからかもしれません・・・。しかし、明らかにどこかで勤務していた時代に知り合う人たちとは異なる人たちに多く出会う機会が増えたことで刺激をうけることが多く、自身をもっと向上させなければならない。。。。と感じざるを得ない状況なっていることは確かです。

ワークライフバランス…は本当に重要と思います。今はちょっとワークの比重が多すぎて、これを機に今年後半はせめて「ライフ」バランスを変えたい次第です。

2013年7月5日金曜日

オーストラリア 就労ビザ457厳格化へ

7月1日は例年、オーストラリアは会計年度スタートということで、様々なことが改正になります。6月末にはついに、与党である労働党において、ギラード首相から党首がラッド元首相へと引継ぎされました・・・。2009年に労働党が政権をとって以来、多様なことがオーストラリア国内では変革があり、その一方、この労働党内における内紛?も落ち着かない事態が慢性的に持続していたことも事実です。

当の国民にとっては、物価が高騰し、人件費や労働条件の整備など、本当に多くのことが緻密化され、外国人はもとより、オーストラリア人にとっても住みにくい国になっているのではないかと感じざるを得ません。

そんな中、外国からの人材むけに存在する就労ビザ(457)の法改正が今回実施されました。 2月の時点ですでに「7月以降厳格化予定」と発表される、という異例の状況でもあり、その際に日経新聞にも取材をうけましたが、、ふたをあけてみれば、、それはもう本当に「厳格化」の一言で、私たち、ビザコンサルタントにとっても大変衝撃的な結果に、ただただ茫然としてしまいました・・・。

概要ではありますが日本語で簡単にホームページ上にご案内しました⇒ こちらへ

日本人にとって最もハードルが高くなったのは「英語力」の要件でしょう。 6月までは、いろいろあっても、ほとんどの職業においてはこの英語力要件は免除されていましたが、今後、ほぼすべての就労者はIETLS 5.0の取得が必須となります。 日本からは、もちろん大変多くの企業が進出しており、駐在員としての立場で、現地にて就労していますが、これらの方ももちろん該当します

構図として、「国内の労働市場の保護」が大きな理由ですが、それでも、極端な締め付けがはたしてよい経済効果になるかは疑問です。企業進出の足止めにならないような形にしてほしいと願います。

年々、申請プロセスも段階的に効率重視となり、今後就労ビザはすべてインターネットのみの申請となり、初進出のケースは、スポンサー期限も12か月と短縮され、これから、進出しようとする日系企業へのインパクトは思っていた以上に発生しそうです。

サポートする立場としては、これらの影響は外国企業に対しては、まず、Negative に感じざるを得ません。 真に、オーストラリア政府の目指している方向というものに対して、どうも疑問が残ります。

これからどうなっていくのか、、、9月には選挙も控え、ほぼアボット氏率いる自由保守党への支持が大きいとされていましたが、この時点でラッド氏が台頭したことにより、そのゆくえは秋までの選挙戦に託されるのかと感じています。