今週はスタディウィークといえるほど連日ワークショップに参加しました。どれも興味深いトピックスでしたが、本日は、上智大学で開催されたアジア・太平洋地域への高度人材移民に対するチャレンジ ワークショップ (The Challenges of Highly Skilled Migration in Asia and the Pacific)に参加しました。 日本では、なかなかこういう「移民」関係のトピックスを話題とするワークショップが少なく、かつ英語でのものは今まで在勤時代の法務省会議でしか経験がなかったため、非常に楽しみに参加しました。 タイトルの名前とおり、今時代は「グローバル化」しており、各国は高度人材確保に対しても非常に競争の時代を迎えています。 常に、高度人材と言われている人々はよい仕事を求めて移住する傾向でもあり、どれだけ、この、人材を国家で確保できるか、ということが近年の関心ごとにもなっているのが現状です。
そんな中で、昨年日本も「高度人材」確保を意識して、ポイント制が導入されたことにより、この傾向が明確化してきていますが、実際のところ、施行後、まだまだ課題は山積みです。 そのような中で、まわりのアジア各国、そしてオーストラリアを含めて、各国のとりくみについて各識者が参加し、活発なディスカッションが開催されました。
オーストラリアからも移民省から多くの研究を依頼されている著名な教授が参加予定だったのですが、残念ながら急きょ来日できなくなったそうで、とても残念でした…。なかなか実務をしていても、研究者の声を聞く機会も少ないため、またの機会を期待したい次第です。
国は香港・シンガポール・オーストラリア・韓国・台湾・中国、そして日本の挑戦という各国の状況を次々に発表されました。 日本は歴史的・文化的にみても、特に韓国や中国、そして台湾などのとりくみは非常に比較材料としても有益でもあり、私自身もほぼ初めてきく内容も多く、大変興味深い状況でした。 これらの国でもっとも興味深い内容であったのは、台湾です。 台湾は中国と、歴史的に非常に複雑な時代もあったものの、現代については時とともにその政策はずいぶん歩み寄りの道をたどっています。そんな中で、台湾⇒アメリカに多く留学した学生たちがその後、自国のために貢献するしくみとして、特にITーシリコンバレー帰りの学生を優遇した政策が長く継続していたようです。その恩恵と、国家的プロジェクトとして、台湾のシリコンバレーのような街も整備し、そして、現に台湾においてはIT/テクノロジー産業は急成長したようです。 今の流れは、巨大市場として、そして、同じ文化圏でもある中国を視野に入れ、優秀な中国人を多く採用できるようなしくみを作り上げているようです。この中で、また興味深い内容だったのは台湾では中国籍の人を雇うことが法的にできない、ということです。そのため、多くのR&D センターを中国国内に配置することで、ここに採用した中国人を設置し、中国市場を開拓していく、という構図でした。 ここから学べる点は、国として、人材が他国へ流出しないように、戻ってくるしくみ、そして、隣国への市場開拓へもうまく、同じ文化圏の人材を活用する、という形で国家政策として作り上げている点です。
はたして日本は・・・といろいろアイデアを巡らせました。日本は歴史的に中国や韓国・台湾とも大きなつながりがありますが、何か特化した産業を検討し、人材育成、、、という点で、これらのしくみは特に構築されていない気がします。 少し思いつきになってしまいますが、 たとえば、今、日本は「観光立国」になるべく多くの課題をかかえ、そして国家的プロジェクトともいえるほどの重要課題になっています。 が、この人材育成の受け皿、そしてその発展性にむけての戦略はいまいち響くものは見当たらない印象です。
「観光大国」としていま、近隣諸国で見渡せば、オーストラリアはアジア隣国において突出したその基盤、歴史、教育背景を持っています。また、事実として来日観光客としてのオーストラリアの数字次は毎年上昇傾向、かつ、彼らの興味深い点は日本に観光産業をつぎつぎと起業する人もおり、これがきっかけで、グローバルに認知度を高める効果さえ生んでいます。
もし日本が真剣に観光立国になるという目標を立てるのであれば、必須言語である英語、そして、その観光産業の実態、しくみ、など日豪が連携することで、人材育成拠点としても活用し、そしてリターンしてくる人材を日本各地に配置することにより、効果を期待できるのではないか、と思いました。 人材育成、そして高度人材を作り上げるためには「教育」そして「現場」が必要です。 台湾のIT産業フォーカス、というヒントからふと思った次第ですが、 日本も「観光」を産業と位置付け、このように国家レベルでパートナーシップをつくることで迅速に観光立国になるレールを増やすことができるのではないか、と思いました。 ビザ面からもワーキングホリデーという「就労」でき、長期にわたり、滞在できるビザの活用はもっと政府レベルでプロモーションすべきであり、なぜ、11カ国も協定があるのにほとんど魅力的に活用されていないのか、という原因も追究すべきと思います。
今回のテーマである「Highly Skilled =高度人材」 とは?というのがもう1つの課題と思います。
日本という国にとってどんな人が高度人材なのか、以下が私が考える人材です。
<高度人材>
・高度な技術をもっているもの
・これらの人材がくることにより国に有益となる=経済効果を生む
・日本のことを十分に理解し、(言語・文化含めて)かつこれらの慣習をもってビジネス活動を他国言語・他国の文化(=つまり外国人にとって自国)にて対応できる人
・高度=誰もがもっていないため、不足しがちな職業
時に、結果としてこの層は収入が高い人たちになりますが、常にそういうわけではなく、「高収入=高度人材」ということのみではなく、そのバロメーターは決して給与金額のみではない、というのが印象です。
ファシリテーターの大石奈々先生は社会的な環境の分析から今おかれている日本の現状をふまえて、その日本独特のチャレンジがある、という点を多くご指摘されており、まったくの共感でした。
なかなか、日本はまだビザの種類をつくったとしても、それを応用するための生活環境がおいついていない、というのが大きなチャレンジになっているということです。
長年実務をしてきた自分にとっては、熱心なカ国の研究者のみなさんの発表は非常に新鮮であり、また、本当によく分析されている、というのが印象でした。最近はイミケンを通じて、日本の在留資格について多く考える機会もあり、またどのように発展できるか、既存のしくみをどのように効果的に活用できるか、という点については、オーストラリアが既にときにビザクラスの「プロモーション」として実施してきた多くの成功例を実務者の立場として体感しているため、これらをふまえて、もっと「具体的なビザクラスをPRする」という手法は、既存のものを応用できる点において日本には導入できる点が多くあると感じています。
少なくても、日本でこのようなワークショップが開催され、また、参加者の多くの人も多様な問題意識をもちながらかなり活発な意見が交わされ、日本政府の方も場を共有していたことは、今まで参加した中で、もっともエキサイティングなものでした。
最後には、法人からアメリカ商工会議所、リクルートエージェンシー、そして、政府からも法務省・経産省の方もプレゼンされ、それぞれの立場からの意見も非常に興味深いものでした。
終了後、法務省の方でかつて、在勤時代に参加していた東アジア会議にてお世話になった方で、嬉しい再会もあり、とても充実した1日で、久しぶりにじっくりと Migration ということについて考えた1日でした。 ぜひまたこのような機会があれば、参加したいと思います。
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